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ヘルトが誰かに嫌われたままであるのを、僕は見たことがなかった。あいつは誰に対しても真っ直ぐ思いを伝え、相手の気持ちを全て受け止めるのだ。
はじめはこいつの暑苦しさに不快感や警戒心、嫉みを抱く者は多い。それでも徐々にそんな気持ちがつまらないものだと気付かされる。
あいつはどうしようもなく馬鹿なのだ。全ての人間が分かり合えると本気で信じているのだ。そしてそれを本当にやってのけるのだからたちが悪い。
そんなヘルトだから大丈夫だ、そう信じていた。だが、今回ばかりは例外だった。ヘルトの声は届かなかった。
それだけならまだしも、より不公平な取引をふっかけられるようになってしまった。ヘルトは何度も頭を下げ長に頼み込んだが事態が好転することはなかった。
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