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戦わないで済むなら戦わないに越したことはない。
「さぁ、そろそろ帰ろうか」
蜂笛を鳴らそうとしたそのとき、ボーン、ボーン、と古時計のような音が鳴る。
そして――
「っ!」
強風と共に僕の五倍の大きさはありそうなカメレオンが姿を現す。
空の色に溶け込んでいたんだ。
体中が機械の寄せ集めでできたカメレオンが、電球の目をぎょろぎょろと蠢かせて僕達を捉える。砂時計、水時計、花時計などの数多くの種類の時計で構成された舌で、まるで品定めをするかのように伸ばした。どうする。ここで交戦するか、さっさと逃げてしまうか。
よくよく目を凝らしてみると体中の至る場所に歯車が組み込まれていた。
カチ、カチ、カチ、と歯車の回る速度が、やがてカチカチ、カチカチ、と速度を増していく。
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ、
機械型カメレオンが僕達をぎょろりと睨み、電球の光が強まった。
「レイピア!」
僕の合図よりも早くレイピアが急上昇した。伸び切った時計舌からボーン、ボーン、と音が鳴って口の中に戻っていく。今のが攻撃範囲の限界値だろうか。
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