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18:00を過ぎた。
「やったね!すごくいいと思う」
「沙織さんのおかげです」
この笑顔が大好きで、その為なら、なんでもできる気がした。
「あとは、送るだけね。あら!もうこんな時間。帰らなきゃ」
昨夜、僕は決意していた。
この設計図が完成したら、告白しようと。
「沙織…さん。ちょっとだけ聞いて下さい」
きっと、その雰囲気を感じた彼女。
「な〜に、あらたまっちゃって」
こちらを見ずに帰り支度をしながら応える。
その手を掴んだ僕。
「好きなんです…いえ、愛してます!」
彼女の動きが止まった。
「僕は本気です。沙織さんを大切にしたい!」
ゆっくりと彼女の顔が下を向いていく。
僕の方を見てはくれなかった。
「ごめんね。私も……好きよ」
頬にひとすじ。
光るものが見えた。
「貴方の気持ちには気付いていた。私もそれに、つい甘えてしまって…ごめんね」
また光った。
「ぼ…僕じゃ…ダメですか?」
言った瞬間、卑怯な問いだと後悔した。
もう、あの明るい彼女は居ない。
「貴方はまだ、20歳…私は、おばさんで…高校生の息子だっているのよ」
そんなの二人には関係ない!
…と、言えなかった。
涙と震える肩、噛み締めている唇。
彼女が懸命に我慢しているのを感じたから。
出ていく彼女を…引き止めることさえ。
できなかった。
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