一章. 前夜

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18:00を過ぎた。 「やったね!すごくいいと思う」 「沙織さんのおかげです」 この笑顔が大好きで、その為なら、なんでもできる気がした。 「あとは、送るだけね。あら!もうこんな時間。帰らなきゃ」 昨夜、僕は決意していた。 この設計図が完成したら、告白しようと。 「沙織…さん。ちょっとだけ聞いて下さい」 きっと、その雰囲気を感じた彼女。 「な〜に、あらたまっちゃって」 こちらを見ずに帰り支度をしながら応える。 その手を掴んだ僕。 「好きなんです…いえ、愛してます!」 彼女の動きが止まった。 「僕は本気です。沙織さんを大切にしたい!」 ゆっくりと彼女の顔が下を向いていく。 僕の方を見てはくれなかった。 「ごめんね。私も……好きよ」 頬にひとすじ。 光るものが見えた。 「貴方の気持ちには気付いていた。私もそれに、つい甘えてしまって…ごめんね」 また光った。 「ぼ…僕じゃ…ダメですか?」 言った瞬間、卑怯な問いだと後悔した。 もう、あの明るい彼女は居ない。 「貴方はまだ、20歳(はたち)…私は、おばさんで…高校生の息子だっているのよ」 そんなの二人には関係ない! …と、言えなかった。 涙と震える肩、噛み締めている唇。 彼女が懸命に我慢しているのを感じたから。 出ていく彼女を…引き止めることさえ。 できなかった。
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