一章. 前夜

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呆然とした感覚のまま、データを送る。 OA機器と照明を消して、会社を出た。 僕の車の右に、彼女の車はもういない。 その空間が、ただただ寂しく思えた。 条件反射の様に車に乗り、いつもの帰り道を走りながら、いつしか涙が溢れていた。 (こんなはずじゃ…なかったのに…) 涙なんて、思いもしなかった。 (彼女も…好きと言ってくれたのに…) その後の彼女の言葉が、重く響いていた。 そして、それよりも何よりも、あの大好きな笑顔を消してしまったこと。 そうした自分が悔しかった。 涙でボヤけた視界に、コンビニの光が眩しい。 トンネルか山越えか。 躊躇(ためら)うことなく、走り慣れた山道へアクセルを踏み込んだ。
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