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終章. そして今
僕はお世辞にも、運転が得意ではなかった。
涙で踏み込んだアクセル。
峠を越えた下り坂で、曲がり切れず。
車の轍は…崖で途切れてしまった。
心肺停止で救急搬送された僕の体。
懸命な蘇生処置で、何とか命は取り留めた。
ただ…命の岐路とも言われる30分。
それを過ぎていたのである。
脳死。
もう二度と意識が戻ることはない。
ドナー登録を見て、泣きながら両親は、その私の意思を尊重した。
まさか自分が?
なんて思いもせずに、軽い気持ちで選んだものが、最期の選択に変わった瞬間であった。
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