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プロローグ 求婚と追放
そこは、世界経済の中心と言われるドルガン連邦国。
いまだ古い貴族制度の残るイージス州には古来より、他国から亡命してきた様々な人種が住んでいる。
人間をはじめとして、獣人、エルフ、竜人、オーク……そして鬼人である『リン・カーネル』もまた、その一人だ。
「お前は今日をもって、アルゴス商会をクビとする」
「……え?」
アルゴス商会の会長であり、牛の角の生えた獣人『アルゴス』は、ためらうことなくはっきりと告げた。
僕がクビだと。
これまで何年もアルゴス商会の護衛として、危険な目に遭いつつも身を粉にして働いてきたというのに。
突然すぎて理解が追いつかない。
シックな執務机の前に座るアルゴスの横では、幹部の一人であるオーク『ボロス』と人間の男『ナハル』が険しい視線を僕へ向けていた。
「ど、どういうことですか!? まずは理由を教えてください!」
高圧的な彼らの視線になんとか耐え、委縮しながらも問うと、ボロスは不機嫌そうに鼻を鳴らした。
イボだらけの緑の豚鼻が膨らみ、鋭く光る二本の牙は迫力がある。
「取引先に色目を使う護衛なんて、いらないんだよ!」
「い、いったいなんのことですか?」
「しらばっくれるな!」
「み、身に覚えがありません……」
ナハルに怒鳴られ、僕の声は自然と小さくなってしまう。
だが身に覚えがないのは事実だ。
僕はずっと、鉱物資源を取り扱うアルゴス商会の護衛として、商品運搬の護衛をしたり商談時の幹部の警護をしていただけに過ぎない。
だから、客と接点を持ったことなど一度としてなかった。
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