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「わ!」
「きゃっ」
がさっと、真後ろで葉っぱが揺れたかと思えば、同じ方向から落ち着き払った声が飛んできた。マコトは飛び跳ねるようにベンチから立ち上がり、ミサキでさえ思わず小さな悲鳴を上げる。
慌てて振り向くと、そこには眼鏡を指で押さえたひとりの少年がいた。正確に言えば、少年の顔が。ベンチの後ろにあった植え込みの向こう側から、首の上だけ突っ込んでいるのだろう。たくさん咲いている大きな赤い花に紛れてはいるが、どうしても生首が浮かんでいるようにしか見えない。とにもかくにも、不気味だった。
「ど、どうしてそんなところに……え、いつから? どちらさまですか?」
「適格な質問だな。いいだろう、ひとつずつ答えてやる。まず、なぜここにいるかだが。俺はもともと、このポインセチアの植え込みを挟んで逆側にある雪だるま型のベンチで気持ちよくうたたねをしていた。そこへ、後からやってきたお前たちが真剣な調子で話を始めるものだから、俺の性能の良すぎる耳は、俺の意思とは関係なく情報を拾い始めてしまったというわけだ」
「ね、寝てたの? ここで? 風邪ひくよ?」
「つまり、盗み聞きしてたってことね。で、いつから聞いてたの?」
「ふむ、二つ目の質問か。『さっきまで確かに忘れていたはずのミサキちゃんのことを、ボクはいきなり思い出したんだ』辺りからだな」
「だいたい最初から、ほとんど全部だねっ!?」
聞かれて困るような内容ではない。そもそも、聞かれたところで普通の人に信じてもらえるような話でもない。けれど、だからこその恥ずかしさというものがある。赤くなったり青くなったりと忙しいマコトの様子を気にすることもなく、眼鏡の少年はマイペースに続けた。
「三つ目の質問だが、俺は――」
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