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マコトの脳天から発射された疑問符に押し出されるように、眼鏡の少年が首を引っ込める。ポインセチアの向こう側に消えて完全に見えなくなってしまったタイシだったが、やがて植え込みをぐるりと迂回してベンチの脇のほうから姿を現した。
改めて全身を眺めてみても、やはり昔の面影はどこにもない。すらりと縦に伸びた長身を、細身のロングコートが包んでいる。何事にも動じないという本人の性格もあって、とても同い年とは思えない大人びた雰囲気を放っていた。
「百聞は一見に如かず、だ」
タイシはマコトと同じケータイフォン型デバイスを取り出して、軽快に操作を始める。ほかの二人にも見えるように、デバイスを地面と平行になるように上向けてかざすと、画面の映像が中空に浮かび上がるように表示された。やがて、音のないまま時間が動き出す。確かにそこには、マコトらしき人物が蒸気機関車の前に飛び込む様子が、俯瞰からの構図ではっきりと映っていた。
「ああ、これはマコトだわ。こんなにまっすぐなのは、マコト以外あり得ないわ」
「ウルトラリアルを打ち出しているファントムカンパニーにとって、デコレージョンの蒸気機関車を本物だと思って人助けに走る一般人がいたという事実は、自社製品のいい宣伝になるだろうな」
「二人とも、おもしろがってるでしょ! ど、どどどうしよう……なんだか不安になってきた……っ」
「なにキョロキョロしてるのよ。別に悪いことをしたわけじゃないんだから、堂々としていればいいじゃないの」
急に周囲の視線が気になり出して縮こまってしまったマコトの背中を、ミサキの平手がばちんと叩く。元気づけてくれているのはわかるが、もう少しだけ力を抑えてほしいと思わなくもない。
「だが、これはこれで使えるかもしれんぞ」
「? どういうこと?」
「気にするな、独り言だ。……さて、お前たちの話はすべて聞かせてもらっていたが、改めて聞こう。これからどうするつもりだ?」
「残りの仲間を探したい。だって、まだいるんだよね?」気持ちを切り替えたマコトの力を込めた提案に、ミサキとタイシは大きく頷く。
「いるわね」
「いるだろうな」
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