第一章 目と目が合って、おひさしぶり

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「三、二、一……!」  カウントの途中から自然と始まった唱和に、拳をぎゅっと握りしめたマコトも参加する。その終わりの瞬間、氷の城の中心で小さな変化が生まれた。  じわりと浮かんだ、青い光。それは紫にも赤にもなりながら、血液のようにゆっくりと城全体を満たしていく。決して派手なパフォーマンスではない。目に突き刺さるまぶしいライトアップでもない。けれど、儚くも神秘的な輝きを目の当たりにして、津波にも似た大きな歓声と拍手がわき起こった。そんな中、マコトは驚くことも笑うこともなく、言葉を発することも身動きすることもなく、ただただ氷の城を見つめ続ける。  知っている、とマコトは思った。自分は、この光景を知っていた。つらかった。痛かった。冷たかった。苦しかった。でも、それと同じくらい。いや、それよりも遥かに。  楽しくて。優しくて。温かくて。うれしくて。心が震えるほどに愛おしい記憶が、マコトの中に確かにあったはずだった。  けれど、それがなにかはわからない。知らない。覚えていない。そのことが、悔しくて悔しくてたまらない。ぎゅっと奥歯をかみしめたマコトの顎と首筋が、小刻みに震える。 「あ、あれ……? ボク、なんで……?」  しばらくして、頬が乾いて冷たくなっていることに気がついたマコトは、そこでようやく自分が泣いていたという事実に驚いた。まだ涙の残る目元を慌てて拭いながら見回した視界の中に、すぐ近くでたたずんでいた少女の姿が映り込む。
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