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第一章 目と目が合って、おひさしぶり
「みんな、準備はいい?」
マコトの静かな言葉に、四人の仲間たちはそれぞれ違う反応を示した。
桃園ミサキ。決意を秘めた彼女のまっすぐな眼差しは、いつだってマコトに勇気を与え、背中を強く押してくれる。
緑木タイシ。物知りで偏屈な彼が、眼鏡を押さえて皮肉げに口の端を上げるときは、すべてがうまくいっているという確信があるときだ。
青葉ユウ。穏やかな海のように、晴れわたる空のように、みんなを優しく包み込んでくれる彼が微笑んでくれるなら、きっとなにがあっても大丈夫。
黒鐘エリヤ。次元の違う美貌をフードで覆い隠しているので、その表情は窺えない。それでも、彼が言いたいことはわかる。どうでもいいから早くしろ、だろう。
ちょうど三年前――ともに異世界を救った英雄たちは、中学生になった今でも相変わらず頼もしい。最終決戦前の緊張感にあふれた場面であるにも関わらず、マコトの頬はぐにゃぐにゃに緩んでしまった。
そのままゆっくりと振り返り、クリスマスマーケットへと続く入場ゲートを見上げる。四日前にこの下をくぐったときは、まさかこんな事態になるなんて想像もしなかった。
現状は、とんでもないピンチ。けれどマコトたちは、それをクライマックスに変え、ハッピーエンドをつかみに行く。
軽く握っていた拳に強く力を込めて、限界まで息を吸い込む。胸をそらし、顔を上げて、目指すべき場所を――遠くにある野外音楽堂を、じっと見据える。そして。
「取り戻そう。ボクたちの、六人目の仲間を」
それが、開戦の合図。
マコトひとりだけでは、足音だって小さくて心細い。けれど、すぐに四人分の足音が重なり、地面を震わせてどこまでも響き渡った。
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