冒険家の夢

　冒険家は頷いた。　

「この話を知ったときに、私は思ったんです。私は幸福量が少なかったんだ。だから貧乏な家庭だったんだ。そしてこれからもそれは変わらない。」

　そう言うと冒険家は立ち上がり、お金持ちの前に来ると、座っているお金持ちの前に立った。

「それならば私は、自分のような貧乏な人を無くすために、何か出来ないかと考えました。考えに考えた結果、私に出来るのは冒険だけでした。」

　そう言い終わると、冒険家は海に向かってお金持ちの体を思い切り押した。

「え？」

　お金持ちは何が起きたかわからないまま、暗闇の海に投げ出された。

　海に落ちるまでの時間は、まるでスローモーションのようだった。

　海に落ちたお金持ちは、必死に海面まで上昇した。

　パニックになったことに加え、防寒用の上着が海水を含み重くなり、うまく泳ぐことが出来ない。

　手足をバタバタともがいていると、冒険家の声が聞こえた。