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『帰り道』 Side 康介
「充、帰ろうぜ」
俺は、ついこの間、恋人になったばかりの充(みつる)に声を掛けた。
それまで数人のクラスメートと談笑していた充は俺が声を掛けると、嬉しそうにこっちに向かって歩いてきた。
いや、小走りでって、何それ。
ぶっ、犬みてぇ。
あれ?でも充は猫みたいだと思ってたのになぁ。
何てちょっと脳裏をかすめたけれど、目の前に現れた充を見たら、そんなのどうでもいいって思った。
だって、可愛いから。
目をキラキラさせて俺を見るんだぜ。
もう悶絶もん。
「な、康介(こうすけ)、今日さ、オレ自転車なの、自転車!」
そりゃもう嬉しそうに俺に報告してくれるんだけど。
それ、朝というか昨日にでも言っててくれない?
だって、今朝は自転車で学校に来たってことだろ。
いや、充の家ならチャリ通オッケーな距離だけども。
でも、でもさぁ。
自転車なら俺を誘ってくれても良かったんじゃ、とか思う。
そしたら、いつもよりもほんの少しだけ長く一緒にいれたのに。
つい、ジト目になって充を見る。
「ふーん、充って自転車乗れたんだ。」
「あ、馬鹿にしてるっ。康介は脚長いんだから、俺が自転車でも余裕で追いつくだろ。」
「えー俺歩きなのに。じゃ、2ケツしようぜ、2ケツ。」
「え~、オレ、康介みたいなの後ろに乗せて自転車漕げる気がしないんだけど。」
いや、お前。自分が後ろって発想はないわけ?
お前と俺の身長差、何センチあると思ってるの?
それに、お前が自転車で俺は徒歩なのに何も感じないわけ?
とか思うけど、やっぱり目の前の恋人は可愛くて、俺は結局こいつの言いなりなんだ。
目の前の小柄な恋人はキラキラした目をして俺を見上げている。
体格差は俺にとって涎モノ。
抱き締めると俺の腕の中にすっぽりと治まる、そのサイズ感。
くぅ~。ロマンな、ロマン。
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