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「よし!向かおう!」
「うわっ!?」
急に声を出したので驚かせてしまった。だが驚く青年を気にせず、車椅子を押してその場所へ向かった。雑草が生え放題で青年に鍵を渡され玄関を開けてみれば埃の臭いがして、薄暗く蜘蛛の巣も多かった。
そもそも家に上がるためには段差があり、車椅子では上がれないだろうに。ここを彼に勧めた人物はどんな気持ちで彼をここにやったのだろうか?
青年を見ればわかっていたかのように舌打ちをして、段差前まで行きそこにキャリーバッグをおろし、倒れこもうとしたので阻止をした。
青年を診療所へ連れてゆき、黒の長髪に金色の瞳の身重である楓にしばらく見ててくれと頼み、返事を聞かずにマスクと掃除用品を一式持って空き家へ向かった。
こんな場所で車椅子の彼が一人で住むのだろうか?それとも遅れて誰かがやってくるのだろうか?
箒とハタキで上から掃除をしてゆき、床の掃除も完了して庭の草むしりも完了したのは夕方で腹の虫が盛大に鳴った。朝コーヒーを飲んだきりだな!!
診療所へ帰れば青年が楓の腹を撫でているのが目に入った。その表情は悲しそうでもあり恨めしそうでもあり、楓はその表情を見て寂しそうにしている。
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