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勇者カイルの告白(未遂)
「すごい」
「んがっ」
「起こしちゃった?でも見て、すごく綺麗だ」
外は真っ暗で夜になってる。
精霊たちが小さな明かりのように、ふよふよといろんな色で光りながら飛んでいた。
見慣れた光景だけど、感動しているカイルの邪魔になっちゃうから黙っていた。
「ケイカも綺麗だね」
ここに来ると私の髪が光る。多分妖精の悪戯だと思うんだけど。
なんかカイルの声が近いね……見上げたら耳と鼻の間の所がドアップに…
だっ!抱っこされとるぅぅ!
「お、重いよね、ごめんね」
離れようとしても腰を掴まれて動けない。
「羽根のようだって言ったよ?もうちょっと重めの食べ物がいいのかな」
ふわっといい香りがして、私の背中にカイルの腕がくる。
「はあ、やっと会えたんだなぁ……ケイカに。お祖母様を元気にしてくれた義足を作った君に。魔王なんてどうでもいいんだけど、君に会うのに「勇者」っていうのは便利な称号だったから」
勇者様が「魔王なんてどうでもいい」って、聞いてはいけない事を聞いちゃったんじゃない?私。
少しづつ力が入っていく腕と一緒に、ドキドキと心臓が鳴りだす。
「4歳の時に初めて見たんだ。キラキラ光る精霊と半透明で綺麗な義足」
私と両親の最高傑作。
「ケイカの両親が来た時に話をしてくれた。この島の事と可愛いケイカのこと」
人のお家で娘自慢しないでよ…きっとお母さんだわ。
「会ってみたくて、日に日に焦がれ出して。自分が勇者だって神官に言われた時は、飛び上がって喜んだよ。やっとケイカに逢いに行ける~!て」
そっちなのね。方向が段々怪しくなっていってると思う。
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