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眩しい
「おはよう!朝食できているよ」
起きて顔を洗ってリビングへ行くと、爽やかな勇者様がキラキラ朝食と一緒に待っていた。
ベーコンエッグにトースト、スープにサラダといい匂いの飲み物。
眩しい…目が潰れそう。夢だわ……きっと夢を見ているのよ。
こんな「強欲の島」に勇者様が来て、料理を作って、アマンタイト持って来て聖剣作れとか。
ないわー、ないない。
乱れた食生活で、1人寝込んでて夢でも見てるんだわ。
「いただきます……」
美味しい…。味覚えとこう、夢から覚めたら自分でも作れるように。
「そろそろ聖剣作りにかかろうか」
「そうですね……作れるかは保証できませんよ?」
笑顔で重たそうなアマンタイトの麻袋を、ひょいっと担いで勇者様が工房へ入る。
少しごちゃついているけど私の工房。
古臭くて暗いのを自分でリフォーム。窓を取り付けて棚を作って綺麗にしたの。
光を嫌う鉱物を扱う時は黒いカーテンを閉めれば真っ暗になる。
私の城で私の居場所。
テーブルに置かれた麻袋を震える手で開けてみた。
「これがアマンタイト……」
金属とは違う表面で青白く光る。硬さはダイヤより少し柔らかめかな。
金槌で叩いてみたらゴインという音がした。融点を調べるため、ダイヤの杭で少し削って火にかけても…溶けない。炉に火を入れて温度が上がってから入れてみる。溶けた!鉄と同じ1536℃だわ。成形するのならこの温度でいける。聖剣の作り方は本でちらっと見ただけだったわね、棚に行って本を探す。
えーと確か青い背表紙の本。
「これかな?」
「うわっ!」
そうだ、勇者様がいたんだった。いつも1人で作業するから忘れてた。
少し困った顔で、青い背表紙の本を差し出した。
「申し訳ありません…」
「いや、さすが魔道具士だね。集中力が凄い」
いやいや忘れてただけです。下の段にあった古くて分厚い本を渡す。
「どんなデザインの剣にしたいか、これで決めてください」
渡したのは先祖から受け継がれた、剣のデザインが書いてある本。
あまり見せたことないけど、近くでウロウロされると気が散っちゃうから。
「凄いね。いろいろあるんだ」
テーブルも椅子も1つだけだから、私は窓によって青い本を開く。
~聖剣の作り方~
レア金属に1日をかけて聖なる力を流し込む。(金属がレアであればより良い物になる)
金属が白く輝いたら、ノシムの葉で包んで2日放置。
炉に包んでいた葉で火をつける。輝く金属を炉に入れて溶かす。
聖なる力の反応がなくなる前に力を注ぎながら、クロムにラドン…他7種類の鉱物を接着して叩く。
ある程度叩いたらさらに聖なる力を注ぎ、心で聖剣の形を描く。
形ができたら…
何?ふわっと香るこの香り?爽やかな香りがするセイルかな?
ふっと顔を上げると勇者様の額が見える。
「あっごめん。邪魔だった?」
私が読んでいた本を覗き込んでたみたい。
一瞬呼吸が止まってから、今度は早鐘でも打ったかのように心臓がドコドコ言い出した。
綺麗な紫の瞳でアメジストみたい。銀髪の髪が太陽でキラキラしてる。髪に触ろうとした時
バターン!
「カイル!お腹空いたわ!」
メリルさんが立っていた。はっとする、私何しようとしたの?!
「メリル……」
「あら、ごめんねカイル」
はー危な。なぜかがっかりする勇者様は、ため息をつきながらキッチンに消える。
怒ってはいないよね?私に触られたら愚か者が感染るとかないからね。
それだけは大丈夫。
サンドイッチというものでパンにハムや野菜、スクランブルエッグを挟んで、なんかニュルッとしたものをかけた。
美味しい!いちいち美味しい!!コーヒーと言う飲み物も美味しい!よく合うわ。
「そんなに美味しそうに食べてもらえると、嬉しいな」
定位置のように隣に座ってニコニコこちらを見ている勇者様。
私の口についていたソースというのを手で拭って、ぺろっと舐めた。
なんかお母さんみたい。
「もうちょっと積極的に行かなきゃダメか…」
「?」
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