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義足
「これ君が作ったのか?」
丸い透明な容器の中にシートが3つ。
キコキコとペダルを踏んで海底を移動している途中。
両親がつけてくれた目印を頼りに海底を渡っていく魔道具。
私の自信作の一つよ。
空気は精霊に頼んで容器の中は常に新鮮な空気がある状態で、二酸化炭素は下にある小さな穴から排出していてぷくぷくと小さな泡が海面に上がっていく。海流にも水の精霊がついてくれているから流される心配もない。
精霊にお願いできる私専用だけどね。名前は「スイスイ」。海底をスイスイ走るから。
「そうです。7年前だったかな……」
「本当にすごいわ。あなた天才ね」
照れるなぁそんな事言われると。
自分の作った魔道具を褒めてもらえるとすごく嬉しい。
「あれ?照れてる?」
「う、まあ。えへへ」
勇者様が顔をふいっと背けた。あれ、気持ち悪かったかしら。
「カイルの耳を見て、真っ赤でしょ?」
メリルさんに言われて勇者様を見てみたら、真っ赤になった耳が見えた。
それはどういう反応なんだろう??
「ケイカちゃんが可愛く笑うからよ。ふふ」
あはは……お世辞でしょうね。
両親以外で言われた事なんて一度もない。
「ありがとうございます」
「手強いわね、ケイカちゃん……」
まだ大陸に着くには、少し時間がある。
「あの、私の事どこで知りました?」
メリルさんが説明してくれた。
勇者様は大陸の王都の貴族様で、片足を事故でなくしたお祖母様いた。
そこへ義足を作るのに私の両親が呼ばれる。
あれ?なんか覚えがある……
送られてきた義足は足に吸い付くように固定され、自由自在に歩けてどんどん明るくなるお祖母様。
「君が作ってくれたんだろう?あの精霊が入った義足」
私が10歳になった時に魔道具士協会に呼ばれて、両親が重装備で大陸に出かけて行ってた。
義足を両親が作って、私が精霊にお願いしたの。
歩けない人の助けになって欲しいって。
「最後まで君に感謝していたよ、私に希望をくれたって。ありがとう」
嬉し過ぎて涙が溢れる。作った魔道具が感謝されていたなんて。
人のために作った初めての魔道具だった。
魔道具を作る喜びを覚えたのもあの義足から。
そうしている内に大陸の海底に着いた。
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