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2023.6.30,Start
1.☑
香Side:
" 波紋 Ripple 1 "
夫が帰ってきた。
時計はAM4:43を指している。
普通の時間帯に帰宅しなくなってから幾日過ぎただろう。
記憶が曖昧だ。
それがいつからなのか。
そして平気で朝帰りをするようになったのは最近になってからだ。
玄関を入り、右手にある自分の部屋を通り、いつものように
彼はバスルームへと向かう。
帰宅して彼がつけたLEDオレンジ色の蛍光灯の中、私は彼の部屋の
対にある自分の部屋から抜け出し、洗面所へと歩いて行った。
夫はいつものようにシャワーを浴びていた。
「お帰りなさい」
私はドアの前で声を掛けた。
私の小さな声はシャワーの音に混じり、シャワーの水音と共に
流されていった。
私は夫が浴室から出て着替え終わるまで部屋の前の廊下で待った。
洗った髪を拭きながら出て来た夫に再度お帰りなさいの言葉をかけた。
「ただいま・・ってまさか起きて待ってたとか?」
「ううん、早く寝たものだから目が覚めちゃって」
「そっか、ならよかった。ンじゃぁ、俺寝るわ、もう瞼が
くっつきそうだ、ふぁぁ~」
眠そうに何度も欠伸をしながら夫は自分の部屋へと消えた。
そうして夫は今日も昼過ぎまでたっぷりと眠りを貪るのだろう。
今日、モデルの仕事は入ってるのだろうか?
どちらにしても午後からだから、今から寝ても大丈夫なのだろう。
仕事柄比較的自由が許されるのだが、以前の夫はこうじゃなかった。
夕飯を私と共に摂り、その後はリビングでふたり過ごし、同じ部屋で
寝ていた。
一体いつから私たちの生活はこんなふうになってしまったのだろう。
月の始めに帰りの遅い夫のことを寝ずに待ち、ほんとうは
もう少し早く帰ってほしいと言いたいところを抑え、『遅い日が
続いているようで身体が心配なの』と、やんわりと帰宅時間を
もう少し早くしてほしい旨、伝えていたのだけれど、こんな有様で、
早くなるどころかまるで当てつけのように時計の針をどんどん進めて、
今では朝帰りになってる。
チャレンジャーだよねえ~。
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