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4-2.-
「ただいま・・」
「お帰りなさい」
「検査の結果どうだった?」
泰之さんはちゃんと覚えてたんだ、そっか。
「難病だって」
私の説明を聞いた泰之さんの顔。
今まで一度も見たことのないような微妙な表情をしている。
そんな彼は、微笑んだ表情を無理やり作るかのように口角を
上げたかのような表情を貼り付けて、囁くような声音で
私に言った。
「そっか、そのぉ・・無理しない生活をして養生するしかないな。
俺のことは気にしないでこれからゆっくりと自分のペースで
生活するといいよ」
「ありがと、ごめんね」
「あぁ、それと今日から俺、隣の部屋に移るわ。
香りのストレスになるといけないし。おやすみ」
「おやすみな・・さい」
言えなかった、自分の思いを。
病気の時ほど、何でも手伝ってくれる人が必要なのよって。
隣の部屋に行っちゃったら、大声でも出さないと用事も頼めや
しないじゃない。
その日から夫は自分のことは何でもしてくれて、私の手を煩わすことは
なかったのよ、確かに。
だけど、一方で私のことを手助けすることもなかった。
困ったことがないかを、聞いてくれることも。
私は寝室に置き去られた眠り姫のような存在になっしまった。
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