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琴の父が加瀬を信頼していたのもこうして話を聞くと頷ける、彼女が知らないところでしっかりと彼は自分を売り込んでいたに違いない。それを継母である美菜がずっと邪魔していたのだろうけれど。
「そういえば、母が生きてた頃によく言われていたことがあって……」
誰よりも家族を大切にしていた琴の母は、娘である彼女に何度もこう話していたのだ。
『琴に大切な人が出来た時の、とっておきのおまじないよ? その人とずっと一緒にいたくなったら……家族になって、一緒に幸せになろうって言ってみると良いかもしれない。ママはずっと前に、パパにそう伝えたから』
「もしかして、それで……私はあの時、そんなことを?」
あの頃の琴にとっては、それがプロポーズの言葉なんて思うはずもなく。隣にいた少年が気になって放っておけなくて口にしたおまじないのつもりだったのだけど。
まさか自分から強引に加瀬と将来の約束をしていたなんて思ってもみなかった彼女は、恥ずかしさと居た堪れなさで震えてしまっている。
「……やっと思い出したみたいだな、さすがに俺も待ちくたびれるかと思ったけど」
「え、ええ? 本当に、そうなんですか。あの時の少年が、志翔さんなんて……」
そう言いながらも今までにないくらいに真っ赤になってしまった彼女を、加瀬は抱きしめられずにはいられない。やっと本当の意味で心を通じ合うことが出来たのが、彼も本当に嬉しいのだろう。
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