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攫ってやろうかって何ですか
「俺が攫ってやろうか?」
突然の申し出に琴は時間が止まったのかと思った。
とんでもないような発言なのに彼女の目の前にいる青年は冗談を言っているようでも、琴を揶揄っているようでもなく。
唖然とする彼女を見ても余裕の笑みを見せている。
小さな庭の木がさわさわと揺れ、葉が重なる音まではっきり聞こえるほどにここは静かだ。
彼の手を取れば何か変わるのだろうか? そう思わないわけではない。
――どうして加瀬さんはこんな事を言うの? 出会ったばかりの私に。
琴は加瀬のいきなりの申し出に戸惑いながらも、第一印象が最悪だった彼との出会いを思い出していた。
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