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「す、すみません……」
申し訳なさで小さくなっていく琴の頬を自分の両手で挟んで、お互いの視線をしっかりと合わせると加瀬は大きく深呼吸した。どうやら彼も覚悟を決めたらしい。そして……
「アンタは家族がバラバラになって落ち込んでいた俺にこう言ったんだ。『じゃあ私が早く大きくなって、あなたの家族になってあげるね』って」
「え、えええーっ⁉ 私っ、子供の時にそんなことを志翔さんに言っちゃってたんですか?」
「俺はずっとプロポーズされたんだと思ってたよ、その小さな女の子に! 一日だって忘れることはなく、大人になったら本気で迎えに行くつもりで。それを、まさか本人がド忘れしてるなんて……」
まさかそんな子供の言葉を本気にするなんて普通は思いもしないだろう、それ程までに少年だった頃の加瀬は純粋で一途だったのかもしれないが。
琴はあまりの驚きで口をパクパクさせているが、加瀬の言葉に顔が熱くなっていくのを止められないでいる。
「琴の家族に反対されても、攫って行くくらいの気持ちは最初からあったんだ。俺に胸の中にはあの日からずっと、琴が住み着いているんだから」
「も、もう勘弁してください……恥ずかしくて、このままじゃ溶けてしまいそうです」
「何言ってるんだ、優造とずっと連絡を取っていたのだって俺なりに真剣に考えての事だったんだ。それを何に知らなかったとはいえ、すっかり忘れていた琴の方があんまりだろうが」
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