い第十一話「そして愛は流れていった」

1/1
前へ
/24ページ
次へ

い第十一話「そして愛は流れていった」

   公衆便所にないのは、まあ仕方がない。  しかし、いつもあるはずの会社のトイレに、ない。  これは困る。  どこ、見渡しても、ない。  もちろんこういう事態になった事が解ったのは、すっきりした後だ。  あれから随分経った。  もし、ここが和式だったら、とっくに足が痺れて、アウトだろう。  何の疑いもなく入ったので、非常用のティッシュもポケットにはない。  そういえば……ティッシュ配りのおねえさんとか、最近見ないな。  なんか理由があるのかなあ……。  その理由が解っても、今は何の役にも立たない。    後輩のあほの田中にラインして持ってきてもらってもいいが  いつものあの場違いな明るい声で  『先輩、右から数えて何番目に座ってますかー』  とか聞くだろうし  ドアの上からトイレットペーパー放り投げられ  あいつのことだから  『もう一個いりますか~』  とか、訳の解らん事、ドア越しに叫ぶだろうし、 ec83d86f-25e1-4197-84d4-18c530bac6ac    その時のオレの恰好、自分で想像すると   ①ズボン半降ろし状態で  ②個室の真上の隙間見上げて  ③爪先で立って  ④アシカみたいに  ⑤受け取るポーズは  情けなすぎる。  芯……?  いいえ、うちの会社は「芯なしタイプ」  だもんで  おととし 「スナック玲子」のママからもらった  開店14周年記念のハンカチ      さようなら    じゃー。  
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加