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い第十一話「そして愛は流れていった」
公衆便所にないのは、まあ仕方がない。
しかし、いつもあるはずの会社のトイレに、ない。
これは困る。
どこ、見渡しても、ない。
もちろんこういう事態になった事が解ったのは、すっきりした後だ。
あれから随分経った。
もし、ここが和式だったら、とっくに足が痺れて、アウトだろう。
何の疑いもなく入ったので、非常用のティッシュもポケットにはない。
そういえば……ティッシュ配りのおねえさんとか、最近見ないな。
なんか理由があるのかなあ……。
その理由が解っても、今は何の役にも立たない。
後輩のあほの田中にラインして持ってきてもらってもいいが
いつものあの場違いな明るい声で
『先輩、右から数えて何番目に座ってますかー』
とか聞くだろうし
ドアの上からトイレットペーパー放り投げられ
あいつのことだから
『もう一個いりますか~』
とか、訳の解らん事、ドア越しに叫ぶだろうし、
その時のオレの恰好、自分で想像すると
①ズボン半降ろし状態で
②個室の真上の隙間見上げて
③爪先で立って
④アシカみたいに
⑤受け取るポーズは
情けなすぎる。
芯……?
いいえ、うちの会社は「芯なしタイプ」
だもんで
おととし
「スナック玲子」のママからもらった
開店14周年記念のハンカチ
さようなら
じゃー。
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