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い第十六話「田中、社長になる?」
「あーあー」
「むにゃむにゃ」
「あーあ―田中平社員よ」
「ふぁ~い」
「こら聞こえるか!ワシは神様の声じゃ」
「はっはい!神様の声さまっ」
「突然だが田中平社員、実はお前はもうすぐ社長になる運命にある」
「ま~さか~」
「いや、本当だ。ただし」
「ただし?」
「ただし、福田係長をリストラしなくてはならん」
「はあ」
「あいつは会社にとって非常に不必要な存在だ」
「確かに……」
「したがって、部下のお前が、きゃつの首を取れ!」
「げっ 下剋上!」
「そうだ。その英断が社長への第一歩じゃ」
「うーむ」
「福田は、だらしなくて、酔っ払いで、スケベで仕事はゼンゼン。そんなヤツを斬れぬのでは、お前は社長の器とは言えぬ」
「確かに当たっていますが、むむむ下克上だけは……」
「斬れ」
「うーむ」
「斬れ斬れ斬れ」
「うう~む」
「さもなければ、お前の首を」
「ぎゃ~」
…………
田中「ああ、怖い夢を見てました」
福田「どんな夢を見てたんだ」
田中「かくかくしかじか」
福田「それは大変だったなあ、かなりお疲れの様子だなあ。もう少し眠れ!」
田中「先輩、ありがとうございます。今の夢で疲れましたので、田中、もうひと眠りいたします」
…………以下、もう一度田中の夢の中…………
「あーあ―田中よ聞こえるか」
「ううむ、この声はまたしても先ほどの神様!」
「どうだ!平社員の田中、役立たずの福田の首を取る決心はついたか?」
「やっぱりイヤです」
「では、社長になりたくないのか?」
「なりたいです。でも、先輩を斬るなんて!」
「では、社長になるのを諦めるのか」
「ぐぐぐぐっ、僕は神様なんか、大嫌いだ~。福田先輩が大好きだ~~」
…………
福田「うわ~んうわ~んうわ~ん」
福田の泣き声で目覚めた田中「はあ?先輩、なぜ泣いてるんですか?」
福田「あああっありがとう田中」
田中「???」
福田「うううっうれしいよ田中、えーんえーん」
田中「先輩、正気になってください」
…………
正気を取り戻した福田「いやな、お前があんまり仕事中にすやすや眠っているもんで退屈で退屈で……」
田中「はあ」
福田「誰も遊び相手がいないもんだから」
田中「だから?」
福田「だから、つぶやき続けた」
田中「つぶやき?」
福田「正確には、お前の眠ってる耳元でつぶやき続けた」
田中「……と言う事は、さっきからの、神様の声は……」
福田「俺」
田中「ムカっ!」
福田「ところがだなあ、お前の事だから、ぐっ、絶対、俺の事、ぐぐう、斬ると思ってたら、ぐぐっぐううううう(嗚咽が止まらない)田中、お前は本ぐううう当にいいぐぐヤツだぐぐぅな」
田中「別にいい悪いじゃなくてただ単に当たり前のぐぐっ」
福田「そんなことはないぐぐーーーよお前」
田中「僕は社長になんかなぐぐりたくありません。ぐぐっ先輩と一緒の方がいいです」
福田「田中~!」
田中「先輩~!」
――――――――――――
あ~あ
君たちに言いたい。
君たち、勝手に泣くのはいいが、何か大きな勘違いしてはいないか?
君たちは夢の中でも、絶対社長になれるはずは、ない!
それにしても、まだ、三時の休憩がすんだところ。
この2人、いつまで仕事中に泣き続けるのか……。
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