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い第七話「健康にも効きます」
いつものように、あほ後輩の田中と歩いていたら、商店街の端っこにワゴンがぽつんと止っていて
「ケ・ン・コ・ウ・グッズ」
と下手な手書きのポスターが一枚。
そして
「肩こり直りますよー、しもやけにもいいですよー」
ワゴンの健康グッズを体じゅうに装備したおばさん。確かに元気そうだ。
……と「健康マニア」の田中が小走りで近寄る。
「ねえ、ねえ、おばさん、僕が健康に留意しなくてはいけないところは?」
「ううーん、あなたは猫背を治して、口ひげをはやして、めがねを外すことに留意すれば、きっと健康が訪れるでしょう」
「おばさん、どうして僕が毛が薄いのわかったの?」
「うふふ、私には見えるのよ!あなたの輝く将来が…」
「だったらおばさん、薄毛に効くお勧めは?」
「このネックレス。チタンいっぱい」
「やっぱりそうか、チタンいっぱいでないとダメなんだ。じゃおばさんおばさん、猫背には?」
「これ、このブレスレット。ゲルマニウムいっぱい」
「うーん、やっぱりいくら健康に留意していてもゲルマニウムでないとダメなのか。じゃ、視力良くなるのは?」
「ふふふ、あれとこれとそれ。どれもすごいのよ。なんでもいっぱい効くのよ!!」
「すごいね、よーく効くんだ!!!」
「何にでも効くから、売ってるのよ」
「ふーん。すごいね、おばさんところの健康グッズ」
「もちろん」
「でね、前々から気にしてる事があるんだけど」
「なーに」
「これって、健康に効く?」
「……健康?(こいつほんもののあほうか(おばさんの心の声!))」
「おばさんとこのグッズ、なんか、効きそうな気配がします!」
「もっ、もちろん。一番、最も効くのは健康よ。ここにあるグッズはぜーんぶ健康用に作られたものなのよ」
「やっぱり!いくら健康に留意していても留意だけでは足りないんだ」
「そう!グッズグッズしてると健康に遅れるよっ(笑)!」
「アハハッ!さすがにプロの健康グッズ屋さんだ(笑)」
「健康に効きすぎるから気を付けてね!」
―――以下略―――
結局、あほの後輩、田中はワゴンにある全種類の健康に効くグッズを大枚はたいて買った。
俺は二人のやり取りを聞いていて「何だ、その『健康に効く』と言うのは???」と何度も吹き出しそうになったが、万が一、田中だけ健康になられてもしゃくなので、同じものを買ったもうすぐ昼休みだから早く会社に帰らないとと思った小春日和のいい天気。
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