い第十八話「寂しがり屋のケータイ」

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い第十八話「寂しがり屋のケータイ」

   福田「田中、俺はケータイひとつで女性をコロリと落とすテクニックを開発した!」  田中「はあ?」  福田「それも無料!一円もかからん」  田中「そんなあ~」  福田「なのに、どんな女性もイチコロだ!」  田中「またまたぁ」  福田「題して『寂しがり屋のケータイ』」  田中「なんだかネーミングもショボいですね」  …………  福田「まず、自分のケータイに入っている女性全員に電話をかける」  田中「ヒッ!何と大胆な」  福田「ただし、すべてワンギリだ!」  田中「(さらに)ヒッ!!ウソでしょ」  福田「準備は以上これだけ」  田中「まるで大人のピンポンダッシュのような……」  福田「阿呆ぅ、ここからが肝心だ。あとは俺の考えたセリフをそのまま喋るだけでいい」  田中「はあ、喋るだけ……」  福田「それで、お前はモテモテ」  田中「ホントですか!」  福田「ではこのセリフを読め。俺の役は仮に明美ちゃん、お前は田中、そのままだ」  田中「まあ、ええ、アイアイサー」  …………  明美ちゃん役の福田「さっき、私に電話くれた?」  自分役の田中「あれっ、僕、明美ちゃんに電話かけたっけ?」  明美ちゃん役の福田「うん、着信、入ってたわよ」  自分役の田中「ああ、わかった、僕のケータイ、寂しがり屋さんなんだよ」  明美ちゃん役の福田「寂しがり屋さん?」  自分役の田中「僕が忙しくてかまってやらないと、勝手に電話しちゃうんだよ」  明美ちゃん役の福田「あら、おちゃめなケータイね」  自分役の田中「それも、僕が何度も何度もかけようとして躊躇した電話番号を覚えててさ」  明美ちゃん役の福田「じゃ、私に電話かけるの、ためらってたってこと?」  自分役の田中「だって、明美ちゃんって僕にはもったいなさすぎる存在じゃないか」  明美ちゃん役の福田「あら、そんなことないわよ(笑)」  自分役の田中「ホントにごめんね、寂しがり屋のケータイのおかげで時間、取らせちゃって」  明美ちゃん役の福田「いいのよいいの、気にしないでいつでも誘ってよ!」  自分役の田中「えぇ―っいいの!僕、夕方、明美ちゃんの会社の近くに用事で行くんだけど……」  明美ちゃん役の福田「あら、ホント偶然ね。私、今日、夜は予定ないわ」  自分役の田中「じゃ、軽く一杯だけ、行こうか!」    明美ちゃん役の福田「そうね、寂しがり屋のケータイさんの取り持つ縁ね」  …………  田中に戻った田中「せせせせっ せんぱぱぱい、これ、使います。絶対、使います!田中、使います!」  …………  そして、翌朝  福田「田中、どうだった?」  〃「あれっ?朝早いだけが取り柄の田中、どこ行った~」  〃「お~い」  そこへ「スナック玲子」のママからTEL  福田「あれ、ママ、こんなに早くからどうしたの?」  ママ「あんたの後輩の田中ちゃん、カクカクシカジカで牢屋に入ってるからね、ガチャ」  …………  その「カクカクシカジカ」の内容  ママ「田中チャンさっき、私に電話くれた?」  田中「あれっ、僕、ママに電話かけたっけ?」  ママ「あら、間違いだったのじゃ切るわね」  田中「あのそのこの……」  ピポパポピポポ  ママ「田中チャンまた私に電話くれた?」  田中「あれっ、僕、ママに電話かけたっけ?」  ママ「あら、また間違いだったのじゃ切るわ」  田中「あのそのこの……」  ピポパポピポポ  ママ「田中チャン、いったい何の用なの?」  田中「あれっ、僕、ママに電話かけたっけ?」  ママ「切るよ」  田中「あのそのこの……」  ピポパポピポポ  ママ「田中チャン、いいかげんにしてくれない?」  田中「あれっ、僕、ママに電話かけたっけ?」  ママ「うるせーガチャ」  田中「あのそのこの……」  ピポパポピポポ  ママ「田中、いいかげんにしろよ」  田中「あれっ、僕、マ」  ママ「ガチャ」  田中「あのそのこの……」  ピポパポピポポ  ママ「(-"-;)ガチャ」  田中「あのそのこの……」  ピポパポピポポ  ママ「(`A´)ガチャ」  田中「あのそのこの……」  ピポパポピポポ  ママ「怒(-"-)怒ガチャ」  田中「あのそのこの……」  ピポパポピポポ  「ツーツー」  ピポパポピポポ  「ツーツー」  ピポパポピポポ  「ツーツー」  ×  あとうん十回  ピーポーパーポー  …………  身元を引き受けた帰り道  福田「……いいや俺が悪かったよ、よく考えたらお前の携帯に入ってる女性の番号はママだけだもんな。忘れてたんだよ……」  田中「いいえ、貴重なひとりだけを徹底的に攻めようと思った僕が……。スミマセン」  福田「いいっていいって、ンと謝らなくっていいって」  田中「せっかくの素晴らしいテクニックを活用できなかった僕が悪いんです」  福田「……」  田中「……」  福田「……本当のことを言うと、俺もママしか女性の電話番号知らないんだ」  田中「じゃ、僕がママに掛けてなかったら」  福田「きっとお前と俺とが入れ替わっているだけだと思う。すまん田中」  田中「どうせ僕らは」  福田「ふたりぼっち」  田中「ぐぐぐっ先輩~」  福田「田中~うわーん」  田中「だったら先輩、二人で電話の掛け合いっこしましょうか!」  福田「そうだな!なら誰にも迷惑かからないし!」  田中「じゃ僕が玲子ママの役やります」  福田「じゃ俺は俺の役!」  …………この話これでいったん終了 6a4a3d1f-c97e-46b5-a646-d0490e2139cc
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