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『好きです。放課後、体育館の裏で待っています』
差出人のない水色の手紙が、机の中に入っていた。
今朝も、中休みの時も、昼休みにも入っていなかった。となると、5時間目に音楽室に移動したタイミングか。
それにしても、告白の手紙にしては、甚だ情報不足だ。
自分の名前を書かずに寄こしたことは、百歩譲って「奥ゆかしさ」とみなしてもいい。けれど、最大の欠陥は――。
「用件を先に言うかね、普通」
十中八九、呼び出しの内容が予想できていても、「告白だろうか?」と手紙を受け取った相手をドキドキときめかせてナンボだろう。それを、いの一番に『好きです』なんて。
こういうセンスのない人とは、付き合ったとて上手くいくまい。仮に、学年1イケメンと名高い塙田クンが差出人であったとしても。
――待てよ。
こいつは、罠かもしれない。
わざわざ『告白なんだぞ』と美味いエサをぶら下げたのは、浮かれたターゲットの間抜け面を、物陰から眺めて嘲笑うためなんじゃないのか。つまりは、悪質な悪戯の可能性。
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