4.それぞれの順調なパーティ編成

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 それになんというか……下品で不潔だ。モニタで見て妙にエロそうだった軽鎧は汗で汚れて剣道の防具みたいな嫌な匂いがするしローブも妙に垢じみている。ちゃんと洗っていると言っていたが一週間に一回と聞いた時のキャスリーヌの表情で亀裂が決定的になり、それ以降カイルたちがいた時に比べてもパーティの空気は悪化しキャッキャウフフなど望むべくもない。  この二人は職業冒険者なのだ。俺たち貴族は生活に冒険は必須ではないが、この二人はそれを生活の糧にして飯を食っている。ギルド職員が難色を示したのはそう言うところなのだな、と俺は今更ながらに気づいた。  記憶力を取り戻す前の今世の俺はこんな空気なんてちっとも気にしなかったんだろうなと思う。なにせ王子様なのだからこちらが気を遣う必要など一切ないのだ。けれども思い出してしまった今の庶民の、しかも和を尊ぶ俺のメンタルでは耐えられない。  ああ、剣や魔法が使えて楽しいと思っていたが、この間マジックスケルトンに炎で焼かれてスケルトンナイトに肩を斬りつけられて糞痛かった。前世の命の危険のないのんびりした世界でだらだらやってたゲームだからワクワク面白かったんだ。転生しなければ『ファンタジーな現実』なんて裏の顔を知らずに入れたのに。  一度は冒険をやめようと思いかけたがそれはできなかった。もうやんなーい愛の巣を作るのだーとやってしまって結婚した途端妃を放置しまたダンジョンに潜り始め、パーティを女で埋めつくしてやっぱやめたーをもう一度できるほど俺の面の皮は分厚くはなかった。元の王子メンタルならなんの痛痒も感じなかったのだろうにな。  会話も何も無くなり視線が交わされることもなくなったパーティはダンジョン探索には適していたのか、俺がガチプレイしてた時に比べても驚くべき速度で進行していた。  早く魔王を倒したい。何としても俺の、俺自身のトゥルーエンドを。
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