5.最深部の魔王

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◇  その日、私達はようやく45階層のボスを倒した。この部屋に12日間も貼り付けになりながら。なぜなら一度ダンジョンから出るとボスのダメージは回復してしまうからだ。城では私は面会謝絶の重症扱いで事情を知っているメイド以外部屋に入れないようにしている。  ボスはニーズヘグ。  体長50メートル以上もある世界の根っこに食らいつく神話の蛇。その胴回りだけでも3メートルはありそうな巨大な毒蛇。しかも3メートル級の蛇を大量に従えているしこの巨体で空を飛ぶ。ゆったりと空を飛んで突然高高度から直線的に落下してくるその巨大な顎は恐怖そのもの。遥か高みでニーズヘグが口を僅かに開けたと思ったら次の瞬間にはそのあぎとが目の前に迫っているのだ。  それにその身に纏う毒は強力で、直撃したら死を免れない。わずかな残滓ですら人の五感を奪い肉を爛れさせる。それでも私が用意した魔装具が驚異的な性能でその毒を弾く。これがなければこの部屋に1時間だって居座れないだろう。  この魔装具ですら合計3日もこもって回復しながら1時間ずつヒットアンドアウェイを繰り返し、なんとか4人分の素材をこの蛇から剥ぎ取って作ったものだ。  35階層以下のこのダンジョンはおかしい。難易度が頭狂ってる。バフにバフを重ねがけして装備を鍛え直して瀕死になりながらようやくボスを倒すと次の狂気的なステージが始まる。  この42階層までは1つの階層を降りるのに半月、43から45階層は攻略にそれぞれ1月をゆうに要した。  私たちは等比例的に上がる難易度に、あと5階層を踏破するのは無理ではないかと思い始めていた。あるいはパーティをあと二人増やす?  今更新しいメンバーを新たに育てるのはリスクが高い。アルフレッドに負けてしまうかもしれない。その頃には私とアルフレッドのどちらが先に魔王を倒すか、というトトカルチョが国を賑わせていた。まあ仕掛けたのはジーナだけど。
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