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「その間に私はこのニーズヘッグの素材を使って補助装備を作ります」
「わかった。いつも戦闘以外でも世話をかけてすまないな」
「いえ、戦闘はみんなに任せきりですもの。このくらいは」
「そんなこと全然ないって! リーナの支援がないとこんなとこまで来れなかったんだから」
うひょー! 推しからの感謝とかもうたまらん! フスーフスー!
「すぐに戻ってこのダンジョンを攻略だ!」
『それは困るんだよねぇ』
急に聴き慣れた声が響く。驚きに自分の目が丸くなる。
これは……これはまさか⁉︎ 何でこの階層に⁉︎
ニーズヘッグとの死闘の後に戦う余裕なんてない!
私たちは声がする方に顔を向けるとそこは白い霞が湧き出、薄らとそこに転移してくる者の影が見えた。広い部屋の温度がだんだんと下がり、パキパキと空気が凍り付いていく。
ゲーム内イベントで何度も聞いた魔王の声。私の攻略対象。けれどもまたカイルとライナスと一緒に冒険ができていたから、魔王を倒してどちらかとのトゥルーエンドも見えてきたから倒すのもいいかなと思い始めていた。今のダンジョンの難易度から考えると倒せるかどうかはまた別問題なのだけど。
だんだんと霧が晴れていくにつれてそのシルエットが明確になってきた。
あれ?
魔王ダートシュルフェルドの姿は私の記憶と少しだけ違っていた。
つややかな黒髪はなんだか寝癖がついていてほっぺたにはヨダレのあと。布団を和服に仕立て直したかのような、そうだ確か掻巻だ。煎餅だかビスケットだかの欠片がたくさんついた掻巻を着た魔王が目の前にいた。
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