Secret 4

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「私はいつも真面目に付き合ってるよ。でも今は恋愛とかそういうのはナシでいいと思ってるから。一人で生きて行くための資産運用だし」 私の言葉に、誠は驚いたような視線を向ける。ここまですっぱりと言い切ってしまえば、何かあるのかと疑われても仕方がないのかもしれない。 「どうして?」 やはりその問いをされ私は自分で言ってしまった言葉を後悔するも、もう遅いと思いなおす。そして、少しだけ誠に聞いて欲しい気もしてしまった。 「どうしてって……。男の人を信用できないからかな。 深く付き合うことが怖いというか。どこかで変わってしまうこともあるでしょ?」 昔の記憶が少し蘇り、心の中が黒く塗りつぶされそうになり、慌てて思考をストップするも、誠が私に視線を向けた。 「何があった? お前が会社であの恰好をしている理由だろ?」 いきなり核心を突かれ、私は動きを止めた。ギュッと唇を噛んて襲い来る感情をどうにかしようとしていると、いつの間にか手をギュッと握りしめていたようで、コーヒーカップを取られ、誠は近くのローテーブルに自分のカップと一緒に置いた。 「悪い、話さなくていい。爪の痕がつくから握りしめないで」 力の入っていた手を、誠がゆっくりと開いていく。 「あっ……」 ようやく痛いという感覚が戻り、自分の手にくっきりと爪の後がついていたことに気づいた。
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