secret 1

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「それと、これを召し上がってください。お好みは解りませんでしたが」 そう言って副社長の前に、コーヒーとサンドイッチを置く。 今度は確かに私の態度に驚いたのがわかった。 何の言葉も無く私を見る副社長に、なぜか居心地が悪くなり私は踵を返す。 自分のデスクに戻るためにドアに手をかけて、動きを止めた。 「朝の社長との打ち合わせは変更できなかったので、それが終わり次第ご自宅へ戻って着替えてください。その時間は取ってあります」 顔を見ずに副社長に言うと、今度は後ろからいつもの作ったような声ではなく、やわらかい声で「水川さん。ありがとう」そう聞こえた。 私だっていくら苦手なタイプとはいえ、鬼じゃないんだから。 そんな言い訳をした自分に驚きため息を付くと、私は仕事を再開した。
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