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secret 1
Side 莉乃
「水川さん、この書類を二〇部印刷して用意しておいてくれるかな」
大きな窓から明るい光が降り注ぐ副社長室の立派なデスクの前で、スケジュールの確認を終えた私は、目の前にいる人の言葉にタブレットから顔を上げた。
爽やかな嘘っぽい笑顔を向ける人に、内心唖然としつつも無表情でその資料を受け取る。
「はい」
余計なセリフは言わず視線も合わさない私に、本来ならば不快な表情を浮かべてもおかしくないだろう。しかしそんなことをしないことはこの二年でわかっていた。
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