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清水弘樹、俺の高校からの親友で大手広告代理店に勤めている。二九歳にして役職付きの出来る人間だ。
漆黒の切れ長の瞳、黒の短髪、あまり笑うことのないこの男は、かなり冷たく見えるかもしれない。
そして店と同化するように、モノトーンの服装がさらにこいつの雰囲気をミステリアスな物にしている。
「悪い。待たせたな」
「いや」
ビールを持ったまま、チラリと俺を見た弘樹の横に座ると、俺はバーテンダーにビールを注文する。
『二人になったよ』
周りから聞こえてきた女の子の声に、俺はクスリと笑みを漏らすと弘樹を見た。
「何人に声を掛けられたんだ?」
このクールであまり話もしなさそうな男に声を掛ける女の子も勇気があると思うのだが、それでも弘樹に声を掛ける子は後を絶たない。
「三人だけだよ」
ニコリともせず、静かに答えた弘樹に、俺はさらに問いかけた。
「かわいい子いなかったのか?」
俺はチラリと周りの女の子たちに視線を向ける。
「俺が声を掛けてくる子に興味がないのはお前だって知ってるだろ?」
そう、どんなにかわいい子でも弘樹は俺と違い、絶対に誘いには乗らない。
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