secret 1

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水川莉乃二四歳。大手IT企業であるサイエンスーポレーションの秘書課に勤務している。この会社はここ数年でかなり急激に業績と規模を拡大しており、世界にも進出をし始めたところだ。 会社は都心のオフィスビルの二五階から三五階にあり、役員フロアであるこの副社長室は最も上階の三五階に位置する。 大学を卒業し、入社してすぐ事務職から秘書室へと配属になった時は驚いた。 型を取ったような凹凸の無いスーツに、一つに束ねてネットに入れただけの髪。もちろん化粧はマナー程度で、黒縁眼鏡。 きれいな人だらけの秘書課でなぜ私が? そう思ったがその理由はすぐに分かった。 私の目の前でいつも笑顔を絶やさないこの彼。副社長である長谷川誠のせいだ。 アメリカの工科大学を卒業後、父親が社長であるこの会社に入社し、あっという間に事業を拡大させた二代目。 プログラミングの知識は突出しており、新しいシステムやセキュリティーを次々に開発している。 そしれそれだけではなく、一八〇cmはあるだろう高い身長に、きれいな薄茶色の瞳が印象的な整った顔。街中でモデルですと言っても誰も疑わないと思う。 そしてそれを存分に活かして、本気なのか遊びなのかは知らないが、数多くの女性と噂になっている。 そんな副社長の毒牙にかからないためと、父親である社長が私を任命したと聞いた時は、そんな理由かと呆然としたのを覚えている。
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