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「眠たい……」
「ちょと! 副社……」
「誠」
副社長と呼びそうになった私を制止すると、副社長改め誠は、私の手を取った。
「弘樹、俺達帰るわ」
「え?!」
その言葉に驚いて私は声を上げたが、誠は有無を言わさず私の手を引いて店を出た。
「ねえ、お金も払ってないし、それに……」
「そんなの弘樹に出させとけ。二人っきりにしてやったんだし」
「え? わざと?」
そのために店を出たのかと、私は誠をジッと睨みつけたが、そこにはかなりトロンとした瞳があった。
「そんな事言ってますけど、本当は酔ってるし限界ですよね」
それにすら返事をせず、誠は顔を手で覆う。
「家はどこですか?」
その問いに誠はすぐそばに見える、タワーマンションを指さす。
「え? あそこ?」
「ごめん……送れない……」
送るよりも、自分が帰れないじゃない。そうぼやくこともできず私は大きなため息が出る。
今にも座り込みそうな誠を放置することもできず、私は誠の腕を取ると歩き出した。
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