上空、帰る

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「ねぇ、今どこにいるの?」  ……どう答えるべきだろう。  電話口で、僕は悩んでいた。 「歯医者だよ」  少し考えた結果、とりあえず僕は嘘をつくことにする。 「……もう少し考えて嘘をついてよ。歯医者で3日もいなくなるなんて、おかしいじゃない」  でも、すぐにバレた。 「いや本当だよ。今まさに治療中なんだ」 「どうやったら歯を削りながら電話ができるの……」  ……そうなのか。僕は歯医者に行ったことがないので、そのあたりのニュアンスがよくわからない。 「じゃあ眼医者にしておいて」  眼医者なら治療中にも電話はできるかもしれない。 「……なんなの、それ。なにが死ぬまで一緒だよ、なの。適当な勢いでそんなこと言って、言ったそばから全然会ってないじゃない」  そういえば、何かの勢いでそんなことも言った記憶がある。マズいな、怒らせてしまったのかもしれない。 「まぁ何か事情があるのでしょうし、別に揚げ足を取るつもりはないけど、あなた今日誕生日でしょう? お祝いしたいんだけど、今日はもう無理かな?」  ……そうだったっけ。そういえば、そんな設定にしていた気もする。  どう答えるべきか、少し悩んでいると、携帯電話の電波は途切れてしまい、水平で耳障りな機械音だけが耳に響いてきた。
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