1982年のスマートフォン

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漫画家になりたい。ぼくがそう思ったのは、小学三年生のときだった。理不尽なイジメにあい、不登校になった。うちは母子家庭で、美容師の母さんは家にほとんどいなかった。たったひとりで部屋に閉じこもり、漫画ばかり読んでいた。現実を忘れることができたから。おかげで死にたくなる気持ちが薄らいだ。好きな漫画のストーリーや絵を真似して、自分でも描いてみた。母さんに見せると、泣いて喜んでくれた。すごいじゃないって。 仕事というのはね、お金を稼ぐだけではないのよ。社会というのは、みんなの助け合いで成りたっている。漁師や農家、警察や医者、鉄道員や美容師、それぞれが誰かのための労働をすることで、世の中はまともに動く。だからハルキも、誰かの役にたつ仕事を見つけないと。あなたにしか出来ない素敵な役割を見つけられるといいわね。漫画家なんていいかもしれない。憂鬱な月曜日の朝、あなたみたいな子供が読んで元気になれるような、そんな漫画なら、すごく世の中の役にたつと思うわよ。
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