1982年のスマートフォン

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* 「どうすれば、未来は変えられますか?」 ぼくは不安な気持ちをぶつけた。 「それは、どうすれば漫画家として成功できるかという質問かな?」 meが聞いた。 「はい」 「そんなことは分からないな。私は漫画家になれなかったからね。長年、いろんな本で理論も学んだし、セミナーにも通った。だけど、そこで教えている先生たちだって、漫画家として成功している人たちではなかった。ひょっとしたら、成功した漫画家に尋ねても、きちんとは答えられないかもしれない。どんな作品が売れるかなんて、誰にも分からないんじゃないだろうか。きみは覚えているかい?憂鬱な月曜日の朝、子供が読んで元気になれる漫画ならいいわね、って母さんが言っていたことを」 「はい、憶えています」 「会いたいね、母さんに」 「はい」 去年、母さんは癌で逝ってしまった。 「とにかく」 とmeが話を続ける。 「私がこうやって電話をかけたのも、きみの未来を良きものに変えるためなのだ」 「ぼくは、どうすればいいのですか」 「ハルキくん」 スマートフォンの画面のmeがこう言った。 「未来を良きもの変えるため、きみはどうすればいいのか?私は真剣にそれを考えてきた。この運命の日が訪れるまでに、明快な答えを出しておきたかったのだ。自己啓発的、哲学的な一般論ではなく、個人的で、具体的なアドバイスをしてあげたいと思った」 「個人的で、具体的なアドバイス?」
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