1982年のスマートフォン

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「かすみちゃんだよ」 「かすみちゃん?」 「そうだ、かすみちゃんときちんと話をしてほしい。あの言葉の意味を知りたいのだ。突然、私が…きみがフラれた理由を」 「嘘つき、と言われたことですね」 「その通り。強烈な言葉だった」 「はい、傷つきました。嘘つきだなんて…ぼくは嘘なんか付いてない」 「四十年、考え続けても分からなかったよ」 「ぼくも気になります」 「そうだろう」 「あの時は、彼女の怒りを受けとめるだけで精一杯でした」 「おぼえているとも」 「恐怖だった」 「勇気をだして、彼女に話してくれないか」 「話してくれるでしょうか?」 「きみにしかできないことなのだ」 「ぼくにしかできないこと…」 「おっと、バッテリーが切れるみたいだ」 そして、奇妙な黒い物体の画面から、黒いシャツを着たグレイヘアの中年の男の姿は消えてしまった。
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