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「かすみちゃんだよ」
「かすみちゃん?」
「そうだ、かすみちゃんときちんと話をしてほしい。あの言葉の意味を知りたいのだ。突然、私が…きみがフラれた理由を」
「嘘つき、と言われたことですね」
「その通り。強烈な言葉だった」
「はい、傷つきました。嘘つきだなんて…ぼくは嘘なんか付いてない」
「四十年、考え続けても分からなかったよ」
「ぼくも気になります」
「そうだろう」
「あの時は、彼女の怒りを受けとめるだけで精一杯でした」
「おぼえているとも」
「恐怖だった」
「勇気をだして、彼女に話してくれないか」
「話してくれるでしょうか?」
「きみにしかできないことなのだ」
「ぼくにしかできないこと…」
「おっと、バッテリーが切れるみたいだ」
そして、奇妙な黒い物体の画面から、黒いシャツを着たグレイヘアの中年の男の姿は消えてしまった。
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