1982年のスマートフォン

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* 巨大な夕陽が沈みかけていた。 ぼくはジャージ姿のままで、かすみちゃんの家の近くの公園へ行った。 黄色い公衆電話から呼び出し、夕飯前の彼女に出てきてもらった。同じような、しかし色違いのジャージ姿だった。 「ハルキくん」 ブランコに揺られながら、彼女が質問に答えてくれた。 もう怒ってはおらず、なにか覚悟を決めたような表情だった。 「このことはね、あなたに信じてもらわなくてもいいの。自分でも半信半疑なのよ。だけど、本当にあったことだから、すごく奇妙な話だけど聞いてちょうだい」 ぼくもブランコに揺られながら、うんと頷いた。 「あの日、未来の自分から電話があったの。未来の自分からよ。電話といっても小さなテレビ電話みたいなもので、スマートフォンとか言っていた。未来の自分はすっかりおばさんで、お母さんにそっくりだったわ。ふつうなら信じられなかっただろうけど、その女の人と会話した瞬間に、これは自分なのだと確信した」 かすみちゃんは、ブランコを揺らすのを止めた。 ぼくは言葉を失って、彼女の真剣な瞳をみつめた。
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