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そして、すずしい風が吹いてきた。
「ねぇ、ハルキくん、E.T.ってSF映画を知ってる?今、アメリカで大ヒットしているんだって」
「スピルバーグの新作だよね」
「日本でも年末に公開されるそうだから、ふたりで観にいかない?」
「クリスマス・デートとか?」
「ロマンティック」
ぼくは、かすみちゃんの美しい輪郭がうす闇に溶けこんでいくのを見つめていた。
太陽が沈み、もうじき世界は真っ暗になってしまうだろう。
いつのまにか、現在が過去に、未来が現在になるみたいに。
ぼくは思う。
ぼくたちは、過去にも現在にも未来にも同時に存在している。
たとえ、どこにいたとしても、なにをしていたとしても、いつだって生きることに不安や恐怖を抱く。
だけど、それこそが、きっと生きていることの証なのだ。
THE END
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