1982年のスマートフォン

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* 部屋にもどった途端、ぼくの机の上にあった奇妙な黒い物体が電子音を鳴らした。 これって、なんだろう? うすい眼鏡ケースのようでもある。 グリーンのひかりが点滅していた。 おそるおそる手にとって、そのなめらかなガラスの表面にさわってみた。 すると、物体の表面に、黒いシャツを着たグレイヘアの中年の男が映し出された。 「もしもし。落ちついて、私の話を聞いてくれ」 まるで、SF映画に登場する通信装置のようだった。 ぼくは唖然(あぜん)として、その中年の男の顔を見つめた。ずっと年上だが、自分によく似ている。血がつながっているのかもしれない、と思うほどだった。 「これは未来の電話で、スマートフォンという。略して、スマホ。今、四十年後の世界からかけているのだ」 その男は、ぼくに似た声で言った。 背筋が寒くなり、そのスマートフォン(?)とやらを机に置いた。 宇宙人や雪男、幽霊と出会っても、こんなふうに驚くだろうか?
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