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「ハルキくん、実は気付いているよね?私が、きみなのだと」
そんな声が聞こえて、ぼくは否定することができなかった。こんなに奇妙な現象が起こっているというのに、恐怖を感じていなかったのだ。
大きな深呼吸をして、そのスマートフォンを再び手にする。
「ハルキくん。自分自身にそう話しかけるのも奇妙な感じではあるが…」
とその男は言った。
「この日が訪れるのを待っていたのだよ。四十年前のこの瞬間、漫画を描いていた私にも、まったく同じことが起こった。つまり、未来の自分から連絡があったわけだ。だから、きみの動揺はとても理解できる。そして、その動揺をきみが乗りこえ、私と向き合ってくれることも分かっている。私がきみであることを、きみは本能で感じているからだ」
ぼくは、返事ができなかった。
夢なのか?それとも、幻覚なのか?
あまりにもリアルだった。もちろん、夢を見ているあいだだって、それが夢であるかどうかは判断できないだろう。だけど、スマートフォンというものの手ざわりや重さ、そこに映し出された男の姿と声は、どう考えても現実であった。
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