01.1. そこまで言うなら、やってみなよ

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01.1. そこまで言うなら、やってみなよ

 ひどく真っ暗な山奥。漆黒の闇の中で大きくカーブする道路。うっすらと土埃をかぶった古い「スピード落とせ」との看板。その両脇の白いガードレールもやはりうっすらと土埃をかぶったまま。  それらを背景にひと組の男女が立つ。真剣で怯えたような表情で。 「ここは昔、大学生の運転する車がスピードの出しすぎでカーブを曲がり切れずに、ガードレールを突き破って崖下に落ちたという話の伝わる事故現場です」  カメラの前の男は神妙な面持ちでそう話す。男の手にもスマホが一台、握られている。画面には「除霊コンサルタント 神門院龍騎」と書いた名前の字幕が男の前に現れる。これがこの男の肩書きと名前だ。  神門院龍騎と名乗る男は中年の手前くらいのような年齢。神社の神主のような和装の姿。その服にはグラデーションの紫色が波打ち、派手派手しい金色の縁取りが施されている。  神門院の首には数珠。男の首で連なるクリスタルのような透明の玉は、いちばん小さなものでもビー玉くらい。胸の真ん中あたりにきた最大のものになると、ペッパーミルの頭ほどの大きさ。これ見よがしな大きさだ。
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