銀河のかなたより

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銀河のかなたより

「……そろそろだ! これより、FRSモードを解除し、通常空間へと移行するぞ!」 「了解! いよいよね!」 「了解! ついに到着するんですね。楽しみだなあ」 「FRSモード、解除! ……おおお」 「綺麗……」 「我々の星とは、また少し違いますね。とにかく、ほんとに綺麗です……」  遥か銀河のかなたより、『ある重要な任務』を負って、はるばる地球へとやって来た者たちがいた。 「我々が目指す場所は……、あれだ。あの大きな大陸の右側にある島々からなる国!」 「島がたくさんあって間違えちゃいそうですね。しっかりデータを入力しなければ……」 「遂に……、地球に着陸する時が来たんだね。よし! フィーモ! マーリ! 頑張ろうね!」 「ああ。もちろんだ!」 「はい! 頑張りましょう!」  宇宙船は順調に高度を下げ、やがて地表近くまでやって来た。 「よし、まずは『電磁波透過機能』を一部解除して……、あ、しまった! 一部じゃなくて全解除してしまった! まずいまずい。えーっと、これだ!」  すると突然、宇宙船から謎の光が放たれた。 「……うわ! また間違えてしまった! これは『ワズレイ』のボタンだ!」  ちょうどそこへ、ひとりの地球人が通りかかった。 「まずい! 大丈夫かな!?」 「もう! このおっちょこちょいが!!」 「とにかく、話しかけてみましょう!」    3人は宇宙船の扉を開け、ゆっくりと太陽系第三惑星に足を踏み入れた。 「おーい、大丈夫ですかな?」 「……はい。大丈夫です。あなたがたは一体……?」 「私は、船長のフォーモ。この宇宙船の船長だ。この地球に……、『ガツン!』 あー痛たた。何するんだいきなり?」 「宇宙船だなんて自分からわざわざ言う必要ないでしょアホ! それに、地球人と不必要なコンタクトを取ってはならないと本星(ほんせい)からあれだけ言われてるじゃない!」 「そ、そうでしたね。すいませんでした。あ、地球人さん、今の話は忘れてください」 「言いふらさないから大丈夫ですよ。皆さん、異星人ですよね?」 「ぎょ! バレてる……。いや、我々は、そのー、異星人のふりをしてですね、そのー」 「大丈夫ですよ。僕はこの広い宇宙のどこかに必ず地球外生命体が存在するってずっと信じてたんです。だから別に驚かないし、それに人に言いふらすつもりもありません。ところで、なんでこんなところにいるんですか?」  その車のような、船のような、地球には存在しないであろう不思議な乗り物を見て、少年はこれが他の星から来たものだと理解した。 「話のわかる地球人さんのようだ。実は我々は、とある任務のために地球へとやって来たのだ。そして地球に着陸しようとしたところで、君と遭遇したというわけだ」 「なるほど。……あれ? 僕こそ、なんでこんなところにいるんだっけ?」 「ぎょえ! やっぱりさっきの『ワズレイ』が当たってしまったか……」 「もう……、フィーモのばか!」 「とにかく、詳細を確認してみましょう」 「あ、地球人さん、もしかして記憶喪失に陥ってますか?」 「はい。どうもここ数時間ほどの記憶が飛んでるような……。名前や住所は覚えてますし、昨日のことも覚えてます。でも、その記憶が正しいとは限らないのかな? あ、そういえば財布の中に……、あった。これ、僕の学生証です。やっぱりそうだ。名前は此上日奈太(このうえひなた)。学校の名前も記憶と一緒だ」 「ほう。君はヒナタというのか」 「はい。皆さんは?」 「私はルイ・フィーモ。この宇宙船の船長だ」 「私はエレアム・ユイカリア。副船長です。よろしくね!」 「わたしは、テレリア・ルメア・マーリと申します。一応、科学者です」 「フィーモさんにユイカリアさんにマーリさんだね。よろしくお願いします。歳はどのくらいなんですか?」 「地球の基準では、私は25歳、ユイカリアが22歳、マーリが17歳だ」 「そうなんだ。じゃあマーリさんは僕と同い年だ。『地球の基準では』って言ってたけど、みんなの星とは時間の定義が違うの?」 「ああ。少し異なっているんだ。我々にとっての1秒は、地球における1.5秒に相当するのだよ」 「なるほど~。……ところで、どうして僕の記憶の一部がなくなってしまったの? なんかさっき光ってたけど、あの光のせいなのかな?」 「……あはは。まさにそのとおりでありますのです……」 「さっきの光は『ワズレイ』と言って、記憶を削除する光なの。着陸する際にフィーモが間違って作動させちゃって……。そのせいでヒナタの記憶が一部なくなってしまったの。本当にごめんなさい」 「いやはや、まことに申し訳ない……。しかし、ワズレイの光は少ししか当たっていないはずだから、ヒナタの記憶はそのうち戻るはずなんだ」 「うん。本来は『誰の』『どの記憶』を消すかを設定するんだけど、今回は何も設定してなくて、かつヒナタはワズレイの光に少ししか当たっていないはずだから、ちゃんと記憶は戻るはずだよ」 「なるほど。けど、よく誰にもばれずにここまで来れたね。普通こんな円盤が飛んでたら絶対注目されると思うけど……」 「ああ、それなら大丈夫だ。着陸するまでは透明な状態で飛んでいたから。『電磁波透過機能』というものを使って、光が宇宙船をすり抜けるようにしてあるんだ。だから他の人からは見えない」 「なるほど~。凄い機能だねえ」 「ただ、着陸の際にはその機能を一部解除し、電磁波を地面に反射させ、機体の数ヶ所でそれを受け取ることによって着陸地点とこの船を平行な状態に保つ『平行維持機能』を使うのだが、その際に、間違えてワズレイのボタンを押してしまったのだ……」 「そうだったんだ……。それにしても、宇宙船てほんとに円盤の形をしてるんだね。なんというか、地球人が思い浮かべるUFOの形そのものだ」 「ああ、実はこの宇宙船は形状を自由に変えられるんだ。事前の調査で地球人の宇宙船のイメージを調査した結果、この形が有名らしいとのことでこれにしたんだ。この格好もそう。この国ではこのような格好が適していると聞いたのだが、あれ? ヒナタは全然違うなあ」 「う~ん、たしかに昔はそういう格好をしていた人が多かったかもしれないけど、今はあまりいないかもしれないなあ」 「なんと、参考にする時代を間違えてしまったのかな? とにかく、ヒナタの記憶を消してしまったのは我々だ。というか私だ。なので、記憶を取り戻す力になりたいのだが……」 「ありがとう。たしか何かを探していたような……、いや、どこかへ向かおうとしていたような、どうだったかなあ……。とりあえず、駅に行ってみようかな。何か思い出すかもしれない」 「ほお。駅とは電車が停まるところだな。よし、みんなで行ってみよう!」
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