繭の中に眠る虫

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なんでそんな能天気に笑ってるの 周りもどうしてそれを許してるの 私は何度も怒鳴られながら 汗だくになって 認められるよう目指したのに あいつらは苦労もロクにしないで なんで認められてるの? もっと地を這いつくばって泥をすすって 絶望するくらい苦しみなよ 私がそうだったように 私がどんなに願っても 手に入れられないものをヤツらは持ってる ならその宝石を奪って粉々に砕いて 汚泥の中に捨ててやりたいよ 死んだほうが苦しいと思う絶望を味わい尽くしてから 実際に死んでもらいたいな 目に入るのは願望と真逆の現実 芽生えるのは抑えるのが困難な破壊衝動 その苛立ちを抑えるには ひとり幼虫が繭に籠るように 外界と自分を遮断するしかないの ひきこもりとか言わないで 犯罪者にならないために 必死に生きてるだけだから 「お母さん、全然繭から虫が出てこないね。 この中で死んじゃったのかな。」 「いいえ、生きてはいるのよ。 でもね、幼虫の時に外には敵しかいないことを学んでしまったから この安全な繭の中でただただ時を過ごしているのよ。」 「外に出たいと思わないのかな?」 「この中の虫にとって、外がもっと優しい世界なら 今すぐにでも出たいでしょうね…。」
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