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「伊藤さん、美沙さんを頼む。最高に綺麗に仕上げてくれ」
社長は内線で伊藤さんを社長室に呼び、上機嫌で伊藤さんに要望を伝えた。
「社長、お任せ下さい」
伊藤さんは感情をほとんど顔に出さずに社長に頭を下げる。
伊藤さんのビジネスライクなところは信頼出来て良いけど、友達になりたいタイプじゃないなと思う。
伊藤さんと一緒に更衣室に移動した。
いつもはコルセット、ペチコート、パニエを着けた後、ロココ調のドレスを着ていたけど、今日は車で移動する為か身体にピッタリとした真っ赤なドレスを着る様だ。
このドレスなら、伊藤さん1人でも楽に着せる事が出来る。
化粧も今までのフランス人形風ではなく、現代のドール風になっていた。
お客様の要望に応じた人間ドールを作る事が出来る伊藤さんを尊敬する。
「完成しました。美沙さん、今日から1週間よろしくね」
「私こそ。伊藤さんが一緒だから安心してるよ」
笑顔で答えると、伊藤さんの顔が少し和らいだ様に見えた。
伊藤さんが、私の準備が出来た事を社長に伝えると、社長と白井さんがやって来た。
私と伊藤さんは南館の入口に停められているベンツに案内された。
私たちがベンツに乗り込むと、社長が「美沙さん、頑張ってくるんだよ。白井、加藤様の家までよろしく頼む」と私達に声をかけた。
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