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加藤様がドールのドレスを脱がせ始めた。
いや、やめて!
ドールは精巧に作られているので、ドールは私そのものだ。
髪の毛が入っているせいかどうかはわからないけど、自分と同じドールに酷い事をされると、まるで自分がされている様な気になるのだと初めて知った。
この怒りや恥ずかしさ、悲しさで私の体温が上がっているのを感じる。
そうか、これが勝負なんだ。
1度でも体温を上げる為に、もっと怒れ、もっと恥ずかしがれ、と頭の中で自分に鼓舞する。
加藤様が下着姿になったドールの身体に触れようとした時、「ピー」とブザーが鳴った。
「時間です。今から体温を測かります」
谷山さんが指示すると、さっきの男性が加藤様たちに体温計を渡した。
「36.8分か。まあ、上がった方だな。アニ、良くやった」
0.9分、こんなに上がるとは思わなかった。
1回戦といい、やはり人間ドールはただのドールではなくて感情に左右される。
スクリーンにアニ36.8、雪36.5、花音36.3と表示された。良かった、私が1位だ。
ホッとすると、体温が少し下がった気がする。
「2回戦はアニが勝ちました。とはいえ、人間ドールに触れていないのに、全員の体温が上がりましたね。人間ドールとドールの繋がりは面白いです」
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