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加藤様を見ると、その手には針が握られている。
針を私の右足の人差し指の裏に突き刺したのだ。
見えるところに刺すと傷が残る。足の指の裏なら見えない。
それは私の人間ドールとしての価値が下がらないということ。
酷い、針を突き刺すなんてあんまりだ。
加藤様に怒りを感じていた時、いたっ! 左足の人差し指の裏に痛みが走る。
やめて! 痛い!
心の中で必死に叫んでいるのに、加藤様はその後も、順番に足の指に針を刺していく。
ぎやぁーー! もうやめて!
頭の中ですごい悲鳴をあげた時、「アニ様のドールの目から涙がこぼれました」と谷山さんがアナウンスした。
私、勝ったの?
指がジンジンと痛む中、自分のドールが泣いている姿を見て、なんとも言えない気持ちになる。
ドールが泣いているのは、ドールに私の痛みが伝わっているから?
そんな事があるのだろうか?
信じられない気持ちで、ドールを見ていた。
「アニ、1位になったぞ。痛い思いをさせて悪かったな」
加藤様が嬉しそうな顔をしているのが悔しい。
だけど、1位になったんだよね? これで家に帰れる。良かった、本当に良かった。
「1位はアニです。20分後に4回戦を行います。雪が逃げ切るか、花音が1勝するか、皆さま楽しみにしていて下さい」
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