56人が本棚に入れています
本棚に追加
加藤様がきつい口調で私に命令をした。
「わかりました」と言って、頭を下げる。
ここから出られさえすれば、後は何とでもなるはず。
今だけは従順に振る舞おうと思った。
「今から伊藤さんと一緒に帰っても大丈夫ですか?」
「伊藤は帰すわけにはいかないな。あいつは人質だ」
「えっ?」
「アニが帰ってくるまで、伊藤はこの家で預かっておく。アニが逃げたりすれば伊藤がどうなるかわかるな?」
加藤様が、今にも伊藤さんを殺しそうな口調で言った。
伊藤さんを人質にとられるなんて。
ここから出られさえすれば、2度と人間ドールに関わらずにすむと思っていたのに。
頭の中で必死にどうすれば良いのかを考えているけど、正解がわからない。
だけど、警察に相談すれば、きっと伊藤さんを助けてくれるよね?
「はい。わかっています。必ず帰ってきます」
ペラペラと嘘が口から出る。大丈夫、疑われてないはず。
加藤様の視線と目を合わせば、嘘を付いているのがバレそうで、視線を外し壁を見ながら答えた。
「よし。約束だ。約束を破れば、伊藤とアニの家族全員がどんな目に合うかわかるな?」
伊藤さんだけじゃなくて、私の家族まで?
本当に私は加藤様から逃げる事が出来るの?
伊藤さんや家族を犠牲にするなんて絶対に出来ない。
最初のコメントを投稿しよう!