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お前のところが俺の
ふ、と気が付いたら新幹線はちょうど新横浜駅を出るところだった。
志信の男前なプロポーズを受けて、それに応えて。
しばらく話をしていたのだけど、うっかり寝てしまったらしい。
志信も俺の肩にもたれて、寝こけてる。
よく考えたらこいつ、何時間連続で起きていたんだ? 昨日、俺の上に跨っていたんだからその前から起きていたわけで、家を出てからは寝てないんだよな。
しょうがない、東京駅ぎりぎりまで寝せてやろう。
おろさなきゃならない荷物があるわけじゃない。
今回は身一つの思いつき弾丸旅行で、まあ、こういうのも悪くない。
結構面白かったなと思う。
自分一人だと絶対に思いつきもしないこんな無茶は、志信とだからこそ、一層楽しい。
二人の間でつないだままの手。
指の腹で志信の爪をなぞりながら、さっきのことを思い出す。
『試し石』に聞いたのは、俺との同居のことだったのかと聞いたら、ふふふと志信が笑って「微妙に違う」と言った。
教えてくれない気かと思ったら、笑顔から一転、真剣な顔で志信は言ったんだ。
「オレが聞いたのは同居のことじゃなくて、亨輔とずっと一緒にいてもオレは重荷にならないかってことだ」
なるわけがないのに。
お前がいるから、今の俺になれたのに。
お前のいるところが、俺の居場所。
東京駅まであと少し。
車内アナウンスが流れ始めたら、志信に声をかけよう。
それまでしばらくの間、旅の余韻に浸ることにした。
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